57B9C745-A33B-4366-B9F0-F2DE90741BBC527EDE39-639B-4D39-A7AB-89AA24F0BE0A29DAB2E3-D467-436C-8461-7803DF0FC1EEC531CEF1-554F-40D3-A655-83BB97B56FC08BA98CF7-4B1D-41F9-B92D-03F3B9CF5411
陸文夫が「茶の縁」というエッセイの中で碧螺春をたたえています。
蘇州で半世紀生活しているので、蘇州の名茶碧螺春のことは当然ある程度わかっている。1950年代と60年代、碧螺春が売りに出されると、少し買っていた。それは一種の享楽だった。特に病気の時にいい茶を一杯飲むと、病状がかなり良くなる。当然、茶も食事も嫌だと言うくらいなら、病膏肓だ。
私は碧螺春がわかっており、何度か本物の碧螺春を飲んだ。ここ数年、色々なところ、台湾でも碧螺春を産するようになった。二年前台湾を訪問した時、なんと山の中の茶店で碧螺春を見つけた。一杯飲みたいと思ったが、私が蘇州から来たことを知ると店の主人は手を振って断った。「碧螺春ではなく、台湾の凍頂ウーロンを味わってほしい」と言うのだ。茶葉は漢方の薬材と同じで、土壌や気候、生長環境が決定的な意味を持つ。碧螺春は蘇州の東山と西山の果樹園の中、果樹の下、山の斜面で産するものが上等だ。蘇州の東山と西山は花も果樹も多く、春梅や桃李など一年中花が咲いていると言っていい。そして山の斜面や溝の近くの野バラには特殊な香りがあり、山中にたなびいている。茶はとても敏感な植物で、各種の香気をよく吸い込むので、山の花の清らかな香りも当然早春の茶葉に沁みる。ジャスミン茶の人工的な香りよりはるかにあっさりしており、妙なること極まりない。飲み始めは無きがごとくだが、じっくり味わっていると確かに感じる。こういう香りの碧螺春こそが本物で、他のどんなところでも真似できない。こういう貴重品は今は多くはなく、多くなっても私には買えない。(1998年1月14日)